HASSEL BLAD:忍者のトリック・H君

「昨日の日記見たよ。やっぱり中判はいいね」と夜中にメールをくれたH氏。
「昔は高くて手が届かなかったけれど今なら安いし買おうと思ってるんだけど相談にのってほしい」と続きます。
「どんなのを買うの?」と聞くと「広田くんと同じやつ」との返事。
色々聞いていくと、ある錯覚をしていることが分かりました。
中判イコール135判に較べて細かい部分まで鮮明に写るということ。
それは危ないワナです。

12036.jpg
▲このサイズの違いから錯覚してしまいそうになるけど落ち着いて。

極限まで大きく伸ばす際には粒子の面から有利なことは確かです。
でも、どうしても避けて通れないレンズの持つ解像度というリミッターがあるから少し厄介。
同じ倍率のルーペで細かく観察していると綺麗ではあるけれど
それは元々のフィルムが大きいだけというトリックで実際にはフォーマットの倍率分、細かい情報量が入っているわけではありません。
「このルーペで135判のフィルムを覗くのと、このルーペで6×6のフィルムを覗くと初めてイコールコンディションだよね。そうすると実際変わらないでしょ。デジタルで言えば云々」
そこまで説明すると理解してくれたのですが
「でも中判って凄い立体感が出るじゃん」とまだ信じられない様子。
実はここにもトリックがあります。
135判の80mmといえばポートレートなどで背景をボカすのに適した焦点距離ですよね。
それに対して例えば6×6のフォーマットでは80mm付近が標準レンズ。画角としては標準なのに背景が同じようにボケる。

同じ焦点距離。同じ絞りならばフォーマットの大きさが変わってもボケかた、被写界深度は変わることはありません。
つまり80mmのF2.8で撮ればハーフや110、135判や6×7判。ましてや8×10でも被写界深度やボケ、パースが変わることはないんです。
望遠っぽくない画角で背景にボケを出しやすい。(被写界深度が浅い)というわけです。
逆に広角でも同じ考え方で問題ありません。
画角で考えるならばボケが変わってくるという状態です。

holder.jpg
▲自分のフィルムマガジンについていた引きフダ。4×4、6×4.5、6×6の原寸大がトレースされている。

こうして考えてみるとフォーマットの大きさというのはカメラとしての絶対的な性能ではなく表現の方法、撮り方に対して選ぶものだと思います。
大きいフォーマットではボケを意識した絵づくりを。
小さいフォーマットでは絞込み全体的にピントを合わせやすく、速いシャッターを切る。
というのが全てではありませんが基本的な考え方ではないでしょうか。
もっとも、昔は製本で135判などは全く使いものにならなかったという話しを聞いたことがあります。
なにしろ印刷するにはフィルムサイズの4倍(約ハガキ大)までしか伸ばせなかったというのだから無理もありません。中判でも小さかったと聞きます。もっと遡ると等倍。つまり135判であれば24mm×36mm(マッチ箱より小さい!)の大きさでしか印刷できなかった時代もあるというので、いかに印刷技術が進歩しているかが分かります。
ところが今は様々な人の努力が実を結び135判でも全く問題なく雑誌の見開きに使うことができる時代になっています。

そう考えるとフィルム全盛時代にAPSサイズの本格的な高性能一眼レフがあればよかったのに。
と思うのは私だけではないはず。
もし、そんなカメラがあったならばシャッターもより高速化が進められたはずだし
決して撮れない世界がそこにあったのかもしれません。
少なくとも鉄道を撮るのに最高のカメラが完成していたはずです。

でも現在デジタルカメラの普及に伴いフォーマットのサイズに巾が出てきました。
これは面白い現象です。
フォーマットは大きい方がいいというわけではないことを誰もが実感できるのではないでしょうか。
デジタルカメラを使ったことがない人や、まだ使い始めて経験が浅い人は「デジタル(フォーマットが小さいという意味)は広角に弱い」といいますが、こうして考えると少し違いますよね。
そんな私も最初はそう考えてしまいましたが元々違うフォーマットとして広い視野で考えれば分かることでした。
やっぱりカメラって最強がないのと同時に万能なカメラもないんですね。


100mm4.jpg
▲100mmのF5.6付近は好きなテイスト。これはどんなフォーマットでも同じ味を楽しむことができる。画角はもちろん変わるけれど、それは二の次。

そんなやりとりをするとH氏は「やっぱり30Dを買うよ」となってしまいました。
なんという変わり身の早さ。さすが忍者屋敷でアルバイトをしていただけのことはあります。
「うん、その分レンズを買えばいいんじゃないかなぁ」とメールしたわけですが
夢を壊してしまったようで「自分の言い方があまりにも覚めていて現実的すぎたかなぁ」と反省してしまいました。
今朝になり「もう少し色々と話したほうがよかったのでは」と考えていると彼の携帯からメールが届きました。「今30Dを買ったよ!」と興奮している様子が伝わってきます。
さすが忍者。フットワークが軽い!
なんて感心していると
「ハッセルの500CとC/Mって何が違うの?」というメールが。
どうやら、まだ買うつもりです。
「ハッセル選びは難しいからつきあうよ」と言いたかったけれど彼は遠く離れた場所に住んでいるため、そうもいきません。
「とりあえず焦るな。」とだけ伝えました。
彼の希望するタイプのカメラは古いものです。
新品がなく中古だけという状態ですから、それなりに値段とコンディションに開きがあります。
できれば安くていい物を手に入れてほしいから、じっくり見て買ってもらいたいのですが何がよくて何が悪いのか区別もつかないと思います。
信頼できる中古カメラ屋さんを選ぶことから始めたほうがいいのではないかと思い幾つかのことを教えました。

長くなってしまったのでその話はまた。

忍者H氏と今回のやりとりをしていたら
「オレ全然知らなかったから日記ネタにしてよ。多分そう思ってる人っていると思うから。」
というわけで日記になりました。
「そんなの分かってるよ。当たり前じゃないか!」
という方ごめんなさい。

ブログ内検索

Facebook

月別アーカイブ

写真集「ここから始まる。」

book-hyoushi-2.jpg

被災地支援写真集
「ここから始まる。」
広田泉
販売中です!
寄付のご報告

QRコード

QRコード